2023年のIPAを振り返る

お酒以外

こんにちは。ここでは2023年に僕が飲んだIPAを振り返っていきます。僕が飲んだIPAだけなので、これさえ読めば2023年のIPA事情はばっちりというわけではございません。この記事は未来の僕が読んでニヤニヤするのが主な役割となりますが、よろしければ最後までお付き合いください。

※この記事は主観によるものを多く含みます。鵜呑みせずに参考程度にご覧ください。

「sublime!」評価を付けたIPA

「sublime!」とは当サイトの最高評価です。この評価になるIPAには普通に美味しい以上のことが求められます。例えば他を圧倒する美味しさや、今まで飲んだことがない発見とかですかね。「sublime!」の評価をしているIPAは誰が飲んでも美味しいと思うので、見かけたら是非飲んでみてください。

 

Knee Deep/Simtra(ニーディープ/シムトラ)

二つ名は「トリプルIPAの頂点」。記事にする前に何度も飲んできたし、記事を書いた後も飲んでいますが余りにも美味しい。これ以外にも様々なトリプルIPAを飲みましたが、同格のものは見つかりませんでした。最大の特徴はバランスの良さで、麦、ホップ、アルコールがとんでもない濃度で共存しています。

 

BALE BREAKER×Cloudburst/Citra Slicker Wet Hop IPA(ベールブレーカー×クラウドバースト/シトラスリッカーウエットホップIPA)

二つ名は「ホップ農家の最終兵器」。フレッシュホップIPA特有の雑味を消しながら、みずみずしい風味は残したままという自分の常識が破壊された1本。フレッシュホップIPAではぶっちぎりで美味しい。味の秘訣が収獲から4分以内の投入でないことを祈るばかりです。

 

North Park×Bottle Logic/(Insert Collab Name Here)(ノースパーク×ボトルロジック/(インサートコラボネームヒアー))

二つ名は「近未来のウエストコースト」。植物苦いのに木苺の味わいもしっかりいるウエストコーストIPA。昔と現代のいいとこどりをしたその味わいは、近未来と言って差し支えない仕上がりです。DDHの影響かと思って同じスタイルのものをたくさん飲んできましたが、この完成度のものには出会えなかったです。となると濃縮ホップの使い方が上手ということになるのでしょうか?技術力の高さを感じる素晴らしいIPAです。

 

INDUSTRIAL ARTS/Wrench(インダストリアルアーツ/レンチ)

二つ名は「果物三重奏」。パイン、ピーチ、オレンジの果物の要素が独立しており、はっきりと分かるのが素晴らしい。後味が甘すぎることがないのも評価点です。濃い味ヘイジーが好きな人にも飲んで欲しいですね。後々調べて分かったことなのですが、日本にあまりヘイジーIPAが輸入されていなかったころにやってきて、その美味しさで覇権を握ったことがあるIPAでした。そりゃ美味しいわけだ。

 

Parish/DDH Ghost In The Machine(パリッシュ/DDH ゴースト イン ザ マシーン)

二つ名は「The Ultimate Citra Bomb」。シトラ爆弾系の完成形と言える1本でした。なにをもって完成というかは人それぞれですが、僕は後味の張り付く苦みがないことによって完成したと思っています。濃いのにくどくないという矛盾しているような表現をするしかない素晴らしいシトラ爆弾。このビールが日本に正規輸入で入ってきて飲めるとは思ってなかったので、インポーターさんに感謝です。

 

North Park/TDH Art Is Hard: Blue Label(ノースパーク/TDHアートイズハード ブルーラベル)

二つ名は「Twice Metamorphosis Hazy」。入りはあっさり系のヘイジーなのですが、温度上昇によりパイナップルの甘みが出てきます。本来はそこで終わりなのですが、このIPAはさらに温くなると苦みが強くなります。どうしてこうなるかは分からないですし、初体験でしたがとても楽しく飲めました。美味しいよりもエンタメ的な衝撃を受けます。楽しく飲めることの大切さを改めて勉強させてもらいました。

 

それ以外で気になったIPA

「sublime!」ではないものの、特記するべき要素をもっているIPAを紹介していきます。ここで紹介するIPAは味と言うよりも、技術的な側面でアーカイブしておく意味があるIPAたちです。

 

伊勢角屋麦酒/YQH1320 ホップスターIPA

こちらのIPAに使われたYQH1320が「Elani」という正式名称を貰ったので紹介します。トロピカルなニュアンスが特徴的なIPAでした。シングルホップIPAということはこれがElaniの特徴というこになります。ヘイジーIPAと相性が良さそうなので今後に期待。HBC586君はまーだ時間かかりそうですかね?

 

BREWDOG/HAZY JANE GUAVA(ブリュードッグ/ヘイジージューン グアバ)

果汁の暴力を思い知りました。普通のヘイジージューンは味わいが薄く、ヘイジーIPAを名乗って欲しくないとまで思いましたが、このIPAはその足りない部分を果汁で補っています。ヘイジーIPAはホップの果物味を楽しむ側面もある中、まさかのご本人登場。コストを抑えて美味しいものを作るとはこういうことだと教えてくれました。これがIPAかは怪しいところもありますが…

 

WCB x Be Easy x BLACK TIDE/Magical C(ウェストコーストxビーイージーxブラックタイド/マジカルシー)

Clean Fusion(TM)という製法の可能性を感じました。今回のIPAでは奇麗な植物が良く出ている印象です。植物IPA大好きマンからするととてもいい技術だと思ったので、この製法を使われてるIPAは積極的に飲んでいこうと思います。

 

技術的なトピックス

ここでは飲んだIPAとは関係ない技術的なトピックスを紹介していきます。飲み手としては「ふーん」ぐらいで済むものなので深くは解説しません。というか出来ません。

 

酵母内の濁りの遺伝子が見つかる

ヘイジーIPAで最も大切な要素である濁り。そんな濁りを生み出す遺伝子が見つかったらしい。とはいえ濁る要因は色々とあり、今回はドライホッピング中の濁りについてとのこと。要するに穀物のタンパク質とホップのポリフェノールの結合によって生まれる濁りだ。今回の研究では酵母内に特定の遺伝子があると濁りが発生することが分かった。

それだけだと「ふーん」で終わることだが、この論文で一番興味深いところは濁りが味わいに影響しないところだ。本論文では濁る酵母において濁る遺伝子を取り除き、それ以外全く同じレシピでIPAを作成し、それらの味わいのブラインド評価を行った。その結果は濁りがあるなしを味だけで判別することは出来ず、濁りは味わいには寄与しないというものだった。この事実はかなり衝撃的だが、クリアなIPAとヘイジーIPAではレシピが違いすぎるので、我々のIPAライフには何も影響は出ないだろう。

今後これらの性質を利用した「甘口なウエストコーストIPA」や「苦みが強烈ですっきりとしたヘイジーIPA」が出てくるかもしれないが、そこまでのシェアは得られないと思われる。

原文:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.07.10.548400v1

参考元:Cullage Box
URL:https://cullage-box.com/uncovering-a-gene-for-haze/

 

YCH 702が試験段階を終える

大手ホップサプライヤーであるYakima Chief Hops(YCH)。皆様にはCryo Hopを作っているところと言った方がなじみ深いかもしれない。そんなYCHの二酸化炭素抽出液状ホップYCH 702が試験段階を終え、商品として正式販売される。YCH 702はJohn I Haas社のIncognito同様ワールプールで使われることが推奨されている。国内のブルワリーではWCBがMosaic MainlineというIPAにて使用していることが確認できた。海外のトップブルワーFidensもJasper With YCH 702というIPAで使用しており今後の活躍に注目したい。

原文:https://www.yakimachief.com/commercial/hop-wire/YCH702

 

ウエストコーストIPAの定義が決まる

Brewers Association(BA)のBeer Style GuidlinesにWest Coast-Style India Pale Aleが追加された。これまでウエストコーストIPAはAmerican-Style (Imperial or Double) India Pale Aleに含まれており、独立したスタイルとされていなかった。さぞかし厳格が定義が決まったかと思いきやかなりふわっとしている。ふわっとしすぎるが故に解説するわけにもいかないので、ここではBAのウエスコーストIPAを追加するお知らせの記事を一部抜粋する。

In the early days of craft brewing, many American brewers drew inspiration for their America-Style India Pale Ale from British-Style India Pale Ale. These beers typically would have a noticeable malt character. Over time, in order to emphasize the hop character, some American brewers began to brew their India Pale Ales with more pronounced hop character and less focus on the malt. The result is a beer lighter in color and drier in its finish with a high to very high hop aroma and flavor. While some brewers still brew the original version of the American-Style India Pale Ale, the category has diverged into two distinctly different styles. Both brewers and consumers have adapted the moniker “West Coast” for this divergent style as a nod to both the perceived area of origin as well as the location in the U.S. where the hop varieties typically used in this beer are cultivated.
New Styles Added Are West Coast-Style India Pale Ale and Dessert or Pastry Stout より一部抜粋

機械翻訳+意訳

クラフトビール醸造の初期には、多くのアメリカの醸造家が、イギリススタイルのIPAからアメリカンスタイルのIPAのインスピレーションを得ました。これらのビールは通常、モルトの特徴が際立っていた。時が経つにつれ、ホップのキャラクターを強調するために、アメリカの醸造家の中には、ホップのキャラクターをより際立たせ、モルトをあまり強調しないIPAを醸造するようになった。その結果、色は薄く、後味はドライで、ホップのアロマとフレーバーが高いか非常に高いビールになった。現在でもアメリカンスタルIPAのオリジナルバージョンを醸造している醸造家もいるが、このカテゴリーは2つの異なるスタイルに分岐している。醸造家も消費者も、原産地として認識されている地域と、このビールに一般的に使用されるホップ品種が栽培されている米国内の場所の両方にちなんで、この乖離したスタイルを「ウェストコースト」と呼んでいる。

この説明を読む限り全てのウエストコーストIPAと呼ばれるものを網羅しているということになる。私の分類では「アメリカンIPA」、「昔のウエストコーストIPA」、「現代のウエストコーストIPA」の全てをウエストコーストIPAと認めるというのだ。定義としてそれでいいのかとも思ってしまうが、定義がままならない内に広がってしまったので仕方ないだろう。この発表によりウエストコースト警察は廃業となり、自由な時代が訪れた。

 

日本市場の考察

最後は日本市場の考察を行っていきます。この考察は個人の主観のみで行われているものなので、絶対に鵜呑みにはしないようにお願いします。私はただの飲み手でしかないですからね。

 

スタイル編

IPA市場でいうとヘイジーIPAの1強状態は変わらず。IPA以外ではスムージーサワー等のサワー系の人気が出てきました(サワーIPAも含みますがケトルサワーとの線引きが不明瞭につきIPAには含みません)。一時期流行ってたセゾンは落ち着いた印象です。スタイルというよりはブルワリーの知名度がそのままビールの人気になっているのが実情になります。

 

ブルワリー編

日本国内のブルワリーではなんと言っても「Teenage」。今年創業したのにもかかわらず圧倒的な人気で駆け抜けました。なんでこんなに人気が出たのかは私には分かりません。知っている人がいたら教えてください。

去年人気になった「Inkhorn」、「Passific」は人気が入手困難レベルから頑張れば手に入るまで落ち着いた印象です。 何というか流行り廃りが激しいですな。

海外のブルワリーでは大物が多数初来日。思いつく限りでは「Monkish」、「Parish」、「Faction」、「Silva」、「CLAG」、「Fidens」あたりでしょうか。去年も「North Park」、「ROOT+BRANCH」、「Trillium」等が初来日しており、2023年はこれを上回ることはないやろうなぁ~と思ってました。超えたは言い過ぎにしても同じレベルと言っても差し支えないでしょう。

人気で言うと初来日組は当然大人気ですが、Monkishは二度目の来日時は思ったより売れてなかった印象でした。それ以外にも1本2,000円超えてしまうとブルワリーネームは強くても、売れ残ってしまうものが散見されます。かと言って何が人気かと聞かれるとよく分かんないってのが本音です。1,000円以下の定番商品が一番売れているまでありそうな感じもします。

 

最後に

2023年の振り返りは以上となります。2023年で飲んで一番美味しかったIPAは「BALE BREAKER×Cloudburst/Citra Slicker Wet Hop IPA」です。フレッシュホップIPAが好きで色々飲んできましたが、これを超えるものが出てくることはかなり難しいと思います。だって飲んだ瞬間に出てきた感想が「ずるい」なのこいつだけですからね。雑味が無くフレッシュな味わいだけあるなんて、カロリーゼロなのにちゃんと甘いコーラみたいなもんです。そんなコーラ出たらみんなそれしか買わないでしょう?それぐらい圧倒的です。

こういうところで来年の予言とか書いて当たるとかっこいいのですが、この記事を書いているのは2024年の5月なのでそんなことも出来ないのが悲しいところ。今回初めて技術的な部分を取り上げましたが、調べるのに疲れたので来年はやらないかもしれません。こんなのあったよなぁ~で調べるのではなく、逐一まとめるクセを付けたいものです。

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